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第41回 環境にやさしいバイオマス塗料できました。

第41回、環境にやさしいバイオマス塗料できました。

投稿日:2022/7/20

こんにちは。「こんな塗料できないの?」に私たちが答えます。

高機能性塗料設計技術ソリューションパートナーの瓜生(うりう)です。

 

●はじめに・・・

 まったなしで地球温暖化対策が求められるようになりました。

2030年までに持続可能な社会の実現を目指す国際的な目標が設定されまして、

一気に環境配慮性を考慮した企業経営に舵が切られ、

世の中の変化を実感しています。

地球温暖化対策で注目されるのは、温室効果ガスの代表とされる二酸化炭素を

削減することにあります。廃棄物を燃やすと二酸化炭素が排出されますが、

廃棄物のもとを辿り、それがバイオマス資源から作られた“もの”であれば、

廃棄処理で排出される二酸化炭素は、植物や微生物が光合成にて大気中から吸収した

二酸化炭素ということになり、長期的な視点でのカーボンニュートラルの考え方

(図1)が成り立ちます。

バイオマス資源を積極的に活用したコーティング剤の開発を行うことで、

社会貢献につながると考え、昨年より開発に取り組んできました。

 

 

 本コラムでは、当社が強みとする機能性フィルム用や機能紙用のコーティング剤の製品群のなかから、

硬化方法自体が環境配慮技術といえる❶UV硬化型のAG(アンチグレア)コーティング剤に対し、

また、熱硬化・乾燥型ではありますが、数十秒程度の短時間乾燥で成膜可能な❷離型コーティング剤、

❸ブリスターパック用ヒートシール接着剤に対して、バイオマス材料を適用した製品について、

ご紹介したいと思います。

 

❶UV硬化型バイオマスAG(アンチグレア)コーティング剤

 UV硬化型のコーティング剤は、UV光照射による秒単位の短時間硬化は、“高生産性”に寄与し、

その“省エネルギー性”は、環境配慮型コーティング技術と言えます。これまで当社ではディスプレイに適用される

UV硬化型のAGコーティング剤の製造・販売をおこなっており、

防眩フィルムが影響を与える高精細ディスプレイで見られる“ぎらつき”を抑制でき、

数多くの実績を積んできました。そんなAGコーティング剤にバイオマス材料を適用しました。

今回、植物油、パルプ、種子などから合成したUV硬化型材料を適用し、完成したコーティング剤の

植物由来成分であるバイオマス度は10~20%となります。従来品と比べて同等の塗膜性能が得られており、

また鉱物由来のフィラーも使用しているため、従来のコーティング剤に比べ石油由来成分については、

約半分まで削減された環境配慮性の高いコーティング剤となりました(表1)。

さらに塗布する基材に木材繊維や綿花など、非可食性植物由来のセルロースを原料とした

TAC(トリアセチルセルロース)フィルムを用いることで、最終製品のAGコーティングフィルムとしては、

さらに環境配慮性を上げることが可能となります。

 

 

 なお、AGコーティング剤について詳しく知りたい方は、過去のコラムで解説しておりますので、

こちらを参考にしていただければ幸いです。

 

第8回、スマホのディスプレイ見づらくないですか?

第9回、スマホを見ていて目が疲れませんか?

第24回、あの“ぎらつき”がJIS化されたんです!

第25回、"ぎらつき"の原因は粒子の大きさが関係してるんです!

 

続いて、バイオマス原料を適用した熱硬化・乾燥型のコーティング剤の提案となります。

 

❷バイオマス離型コーティング剤 

 離型コーティング剤は、テープの背面処理や電子機器製造用の工程フィルム(セパレーター)として、

広く使用されており、当コラムでもこれまでに何度か紹介してきました。

 

第2回、なんでくっつかないの?

第3回、何故ノンシリコーンではがれるの?

第21回、UV硬化だから基材のダメージも少ないんです!

第38回、凹凸を写すことで艶が消える?

第39回、工程が減ると楽ですよね。

 

 離型コーティング剤に求められる性能としては、初期の剥離強度はもちろんのこと、

時間が経過した後や加熱後の剥離強度に変化がないこと、また使用するお客様によって要求する剥離強度や、

粘着剤、被着体が異なるため、お客様のニーズに合わせた開発が必要であり、

当社もこれまで、被着体や剥離強度に合わせた数々のラインアップを用意してきました。

 モノを剥離させるには、くっつきづらいとされる低極性成分をいかに表面濃化させるかです。

今回開発したバイオマス離型コーティング剤「TOMAX FS-9610N/L」は、

基体樹脂に植物由来の原料で合成した樹脂を適用することで、バイオマス度20%を確立。

従来と同等の剥離性能を得ることができました(表2)。

 

 

❸バイオマスブリスターパック用ヒートシール接着剤

 ブリスターパックとは、乾電池や歯ブラシの包装で使用される「透明なパッケージ」のことで、

成型したプラスチック(PET,PVC)と紙を貼り合わせて、

中身が見えるようにする包装形態のことを言います(図2)。

  

 

 ブリスターパック用接着剤は、成型したプラスチックと紙を接着させることを目的に塗装しますが、

紙には商品名や図柄が印刷されるため、プラスチックと紙だけでなく、

印刷インキに対する密着性が求められます。

また接着剤を塗装した紙は、そのままパレットに棒積みされるため、

紙と紙がくっつかないように耐ブロッキング性も必要となります。

詳しくはこちらより過去のコラムも参考にしていただければと思います。

 

第13回、やっぱり中身は気になりますよね?

第14回、環境にやさしい水性接着剤の提案です!

 

 今回、バイオマスブリスターパック用接着剤を開発するにあたり、一番苦労したのは「接着性」でした。

ブリスターパック用接着剤は、成型したプラスチックと印刷した紙が接着しなければなりませんが、

一般的にインキや台紙に密着の良い樹脂は、成型したプラスチックに対して密着性が悪いです。

これは、インキや台紙に密着の良い樹脂とプラスチックに対して密着の良い樹脂では、

それぞれの極性が異なるからです。

樹脂の極性差が大きいものを混ぜても相溶性が悪いため、光沢が悪くなります。

 そこで、極性差が大きいものがうまく混ぜられるような第3成分を添加することで、

光沢が高く、インキや台紙、さらにはプラスチックにも接着させることが可能となります。

今回開発したバイオマスブリスターパック用接着剤「BP-55 BM」は

植物由来の原料で合成された樹脂を適用し、バイオマス度10%を確立しております。

 なお、いくら接着剤のバイオマス度を高めても、ブリスターパックの大半を占める、

成型プラスチックや印刷インキのバイオマス度が低ければ、パッケージ方法としては、

カーボンニュートラルな方法とは言えず、

今回は、成形プラスチックやインキについても業界の方々に協力を頂きました。

成型プラスチックには、進栄化成㈱様のバイオマス度25%のバイオマスPET、

印刷インキには、㈱T&K TOKA様のバイオマス度10%のバイオマスインキを用いて評価させて頂きました。

おかげさまで従来のブリスターパック用接着剤と同等レベルの接着性を確認することが出来ました(表3)。

 

 

●最後に・・・

 持続可能な社会を実現するため、塗料メーカーが従来から指向してきた塗料の水性化やハイソリッド化、

さらに無溶剤化によるVOC排出量削減に加え、カーボンニュートラルなバイオマス塗料への期待も増しています。

今後もバイオマス材料を積極的に活用したコーティング剤の開発に注力いたします。

お客様からのバイオマス塗料開発のご要望もお受けしておりますので、

「こんな塗料できないかな?」などございましたら、お気軽にご相談ください。 

 7月27、28日に大阪産業創造館で開催される「機能性フィルム展」に上記含め

バイオマス材料を適用したコーティング剤を出展しますので、是非お立ち寄りください。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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