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高機能性塗料設計技術 ソリューションパートナー

高機能性塗料コラム

 

 第18回、カニ缶の内面にはオレオレジナスという塗料が使われていたんです。

 

投稿日:2019/8/19 

  

 こんにちは。「こんな塗料できないの?」にお答えする

ソリューションパートナーである日本化工塗料の塩田 淳です。

これまでのコラムでは、最新の塗料や塗装システムの解説をしてきましたが、

今回は趣向を大きく変え、塗料の歴史をさかのぼってトラディショナルな塗料を

取り上げてみます。

オレオレジナス塗料、英語名では「Oleoresinous Varnish」という油ワニス

塗料で、それもカニ缶やコーン缶などの食缶内面用の塗料のお話しをいたします。

よって、今月は、現在の“高機能性塗料コラム”という題目から脱線してしまうこと、

ご容赦ください。

 

 先週の 8月14日は「専売特許の日」です。

この日は、134年前の1885年(明治18年)のこの日に、

当社塗料業の(個人経営)創業者である堀田瑞松(ずいしょう)さんが出願した

船底用防錆塗料の「堀田鑛止塗料及ビ其塗法」(錆止め塗料とその塗り方)が

日本特許第一号として認められたことに因んで制定された記念日である・・・

ということを丁度一年前の8月のコラムで紹介いたしました。

・高機能性塗料コラム「日本の特許第一号は「塗料」なんです。」

 

 今回、とりあげる食缶内面用の油ワニスは、堀田瑞松さんの息子である堀田賢三さんが開発した油溶性ワニス

を源とするもので、堀田賢三さんの開発技術は、1920年(大正9年)に「溶解シ易キフェノール類縮合体製造法」

として、特許出願され、翌年に特許第39310号を取得した当時の技術革新といえる“高機能性塗料”であり、

カニ缶などの食缶内面用塗料の品質を各段に向上させ、このほかにも、錆止塗料、電気絶縁塗料、耐薬品性塗料

にも応用されていきました。1)

 この食缶内面用油ワニス塗料は、その後も乾燥性や耐食性などの向上のため、

原材料や配合面の改良もされてきましたが、その製造方法においては、塗膜から食品への移行物が食品の風味(味や臭いのフレーバー性)に影響を与えないように、直火焚きの開放釜で、200℃以上の高温でグツグツと焚きこみ、系の反応を進めるとともに、風味に悪影響を及ぼす低分子成分を留去させる方法が行われてきました。

 なお、現在に至っては、食品缶や飲料缶の内面塗装の大半は、最新の合成樹脂塗料や、PETフィルムラミネート被覆にとってかわりましたが、ほんの一部の食缶内面用では、直火釜グツグツ焚きの油ワニス塗膜の風味保持性と、ある種の食品内容物との絶妙なマッチングと、なによりも長年の実績により、2年前の2017年まで油ワニス塗料の製造が行われてきました。

 その食缶内面用油ワニス塗料こそが、大正時代に堀田賢三さんが開発した技術が源となり、原材料や配合を変えながらも、約100年の間、グツグツの焚きこみ製造が行われてきた、当社「Oleoresinous Varnish」の油ワニス塗料なのです。

 当社製造釜の写真を(図1)に示します。図の上が約300L容量の製造釜の正面からの写真(縦棒が撹拌羽根シャフト)です。図の下が釜の下に(床下に)位置するガスコンロ部で、製造釜の背面壁裏のガスコンロ制御室からの写真です。

 

このような油ワニス塗料の直火焚きの製造釜は、以前には、当社以外の塗料メーカーにもありましたが、食缶内面用に限らず、より大量生産性にも優れる合成樹脂塗料への切り替えとともに無くなっていき、当社製造釜が日本で最後の直火焚き釜となりました。

 そして、その当社の製造釜も2017年12月の油ワニス塗料の最終製造をもって、

製造装置としての役割を終え、文字通り 直火焚き釜の“火”が消えました。

 この2017年は、当社の法人経営が始まった1917年(大正6年)の日本化工株式会社(※)

設立より、丁度100年でありました。

(※;最初は、日本化工塗料ではなく、「塗料」が社名に入っていませんでした。堀田賢三さんは技師長でした。)

 

 さて、古きトラディショナルな塗料とはいえ、折角の技術コラムでもあるので、

もう少し 油ワニス塗料について、技術的な解説をいたします。

塗料の大先輩である神津治雄さん(関西ペイント株式会社OB)の1972年(昭和47年)の報文2)によれば、

油ワニス塗料であるオレオレジナス塗料「Oleoresinous Varnish」とは・・・

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 油脂と天然樹脂、油脂と加工樹脂との混成物を展色剤とする「ワニス」や「エナメル」である。

 油脂には、アマニ油、キリ油、エノ油や大豆油、綿実油といった乾性油、半乾性油が用いられ、

 天然樹脂とは、主として松脂(ロジン)であるが、これを石灰やグリセリンで中和・エステル化した

 加工樹脂が一般に広く使用されていた。

  しかし、オレオレジナス系塗料全盛時代を迎えた主因は、ロジンとノボラック系フェノール樹脂との

 化成物「油溶性フェノール樹脂」が出現し、これが従来の加工樹脂にとって代わったことにある。

  この油溶性フェノール樹脂と乾性油や半乾性油とよりなる化成物を展色剤とした「ワニス」や「エナメル」

 は美観・保護作用がすぐれているばかりでなく、従来のワニスやエナメルに比べて迅速に乾燥し、

 当時の世代の要求に答えた。

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と解説されており、食缶内面用だけでない幅広い用途で、昭和初期まで「オレオレジナス系塗料全盛時代」で

あったことがわかり、また、「油溶性フェノール」など、まさに堀田賢三さんが開発した技術も油ワニス塗料の

性能向上と、「オレオレジナス系塗料全盛時代」におおいに寄与したであろうことが読み取れます。

そして、様々な缶用塗料報文の歴史パートで、食缶内面用塗料の黎明期において、まず「油ワニスが使用され」

との解説がされており3)4)、やはり、油ワニス塗料が食缶内面用塗料の先駆けであったことがわかります。

(なお、昭和初期の缶詰および缶内面用塗料の技術の進歩状況は、当時の報知新聞にも取り上げられています5)

このような先駆け塗料である食缶内面用油ワニス塗料として、さらに平成の時代まで生きながらえてきた当社

製品の組成概要とその塗膜性能について、(表1)に示します。

 

(表1)当社の缶内面用油ワニス塗料の組成概要とその塗膜性能

 

塗装→焼付(約200℃-10分)によって、硬化した油ワニス塗料の酸化重合塗膜は、平板塗装板から缶への成形加工

(折り曲げや打ち抜き加工)に追従し、食品充填後の殺菌処理である120~130℃の加圧殺菌処理(レトルト処理)

にも耐え、その後の缶詰貯蔵において、食品を長期保存させるという役割を果たし続けました。

 また、あらためて、その組成概要を見直してみれば、「ロジン(松脂の天然樹脂)、桐油、亜麻仁油、ヒマシ油など

の植物油」というバイオマス材料が主成分の塗料です。トラディショナルな技術であり、2017年に生産を終了

した塗料ではありますが、バイオマス利用の考え方は、今後の当社最新機能性コーティング剤の設計においても、

おおいに参考にすべきであろうと考えています。

 なお、現在の合成樹脂塗料の一つである酸化重合型アルキッド系塗料も、広義には油ワニス塗料といえるかも

しれず、油ワニス塗料と同様のトラディショナルな根っ子を持つ塗料といえましょうか。このような酸化重合型

アルキッド系塗料は、焼付が出来ない重厚な工業部材用や鋼構造物用の防食塗料として塗装されていますが、

乾燥性や防食性向上のための最新技術も取り込み、また水性化のような進化もしながら、(広義の)油ワニス塗料

の現役選手~後継者として、今後も防食機能を果たし続けていくものと思われます。

 

 上述しましたように、当社の食缶内面用油ワニス塗料は、2017年12月に生産を終了しましたが、日本で最後

の直火焚きの製造釜を、令和に移る前の最後の平成の4月、下記の文を添え、当社の寒川本社事務棟ロビーに、

オブジェとして設置いたしました。(図2) 

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 大正から昭和、そして平成へと 当社の歴史を作ってきた製品のひとつである食缶内面用油ワニス塗料の生産が

 2017年12月の最終製造をもって終了いたしました。

 本塗料の製造装置は、日本で最後の直火(ガス火)焚きの釜です。本塗料と、本塗料を長きにわたり、

 焚きこんでくれた本直火釜への労いの気持ちを込め、

 平成の最後の時、ここに記念のオブジェとして設置いたします。 

 平成31年(2019年)4月.日本化工塗料株式会社

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本オブジェにご興味がおありでしたら、是非当社へお立ち寄りください。よろしくお願いいたします。

 

 以上、油ワニス塗料のお話をさせていただきました。大正時代に、その肝といえる技術、製品を開発した

堀田賢三さんは、日本特許第一号を所得した父の堀田瑞松さんほど有名ではないと思いますが、塗料やインキ

などの学協会である色材協会(昭和2年、当時の「顔料塗料印刷インキ協会」)の発起人の一人であり、当社以外

の塗料会社や印刷インキ会社の設立にも関わりました。1) 

塗料・印刷インキ工業の発展に貢献された業界の大先輩のお一人です。この機会に、お見知りおきいただければ幸いです。

 

 今回は一回完結のテーマでありましたので、少し長いコラムとなりましたが、最後までお読みくださいまして、

誠にありがとうございました。

 次回は、「転写箔用コーティング剤」について、高機能性材料部の迫田が解説いたします。

お楽しみに。

 

  <参考資料>

1)日本化工塗料株式会社「社史 波濤を越えて」(1993)

2)神津治雄 :油化学「油化学工業と塗料工業」、21[10]、189-207(1972) (参照 2019/8/8) 

3)丸木慎一郎:食品と容器「有機材料(1) 製缶用内面塗料」、40[12]、672-675(1999)

4)小島瞬治 :日本接着学会誌「缶内面塗装の動向」、36[1]、33-38(2000)

5)神戸大学 電子図書館システム「報知新聞 1936.2.27 (昭和11) ビール罎も酒樽も近く鑵詰になる?」 (参照 2019/8/8)

 

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