高機能性塗料コラム
第42回、加飾方式に合わせて接着剤も変わるんです。
投稿日:2023/1/30
こんにちは。「こんな塗料できないの?」に私たちが答えます。
高機能性塗料設計技術ソリューションパートナーの土井雄馬です。
これまでの下記の高機能性塗料コラムにおいて、プラスチック基材への
意匠性付与に適した3次元表面加飾成形工法(以降、「加飾成形」と略す)
及び加飾成形用コーティング剤を紹介してきました。
加飾成形は、意匠という価値の付加に加え、省スペース・省エネルギーであることより、
生産コスト低減にも寄与するといわれており、成長傾向にあります。
さらに自動車に着目すれば、自動車の軽量化は、地球温暖化対策としての
CO₂削減のための重要なポイントであり、軽量化のための内装部品等でのプラスチック使用部位の増加によって、
今後もプラスチック加飾成形の適用部位も増えていくと考えます。
また、皆様がこのコラムをご覧になるために使用されているパソコン(筐体)、
スマートフォン(ハードケース)等にも加飾成形が用いられている身近な製品の例であり、
環境配慮技術としても、その活躍の場が広がっています。
今回のコラムでは、加飾成形技術の中でも、最近当社が注力している加飾成形フィルム用接着剤にフォーカスして
説明いたします。
第40回のコラムでも触れたとおり、加飾成形は大きく4つに分類されます。
樹脂成形サイクル内で加飾を行う「1次加飾」と、成形品を金型から出した後に加飾する「2次加飾」があり、
またそれぞれに「転写」と「貼合」があります。
2次加飾では成形品端部の巻き込みや表面に凹凸形状をつけることが可能である点など、
1次加飾では困難であった加飾が可能なことから、近年では2次加飾の割合が増加しています。
各工法の特徴を表1にまとめました。
目的とする意匠や成形物の形状、基材の材質などによって工法が選択され、
当然、要求される性能も異なってきます。
当社では、色々なお客様のニーズに対応できるよう、2次加飾成形用として、
下記①~③用の3タイプの接着剤を開発しました。紹介させていただきます。
① TOM転写用 ~TOMAX NXS-013R~
転写工法(第40回コラム参照)では、フィルムが残らず意匠面のみを基材に移すため、
接着層の厚さが成形品の硬度を左右します。
そこでハードコート層や基材の硬さを生かすため、接着層の厚さを6µmといたしました。
薄膜で密着させるためには、界面の密着力に加えて凝集破壊に耐えるための
接着層自身の強度も必要となりますが、ベースポリマーの選定と可塑成分の組み合わせにより
達成しております。
図1に、TOM転写でのTOMAX NXS-013Rの膜厚の違いによる鉛筆硬度試験結果、
後述のNATS転写でのTOMAX NXS-014RSの鉛筆硬度試験結果を示します。
② NATS転写用 ~TOMAX NXS-014RS~
成形分野では、ショックライン(図2)と呼ばれる加飾成形時に発生する線状の痕跡が問題となります。
発生する原因はさまざまですが、加飾成形時に熱で溶融した接着剤が
成形品の凸部に触れた際に貼り付いてしまい、フィルムが延伸される際に、
シワが生じてしまうことが一因であると考えられます。
その解決方法として、接着剤のタックをなくして加熱→延伸時の貼りつきを抑え、
真空成形後の過熱蒸気(スーパースチーム)で接着させるNATS工法を選択することで、
ショックラインの抑制を試みております。またTOMAX NXS-013Rと同様に、膜厚を6µmとしております。
③ TOM貼合用 ~TOMAX NXS-015L~
フィルムが成形後も残る貼合(第40回コラム)においては、前述のTOM及びNATS転写用接着剤では、
加熱延伸貼合後にフィルムが元に戻ろうとする力、即ち収縮応力に接着剤膜が負け、
フィルム収縮による貼合エッジ部での基材露出が発生します。(図3)
そこで、TOM貼合用には、厚膜(20µm以上)で接着機能をより発現する粘着タイプを選択し、
さらにフィルムの収縮に負けない膜物性に調整することによって、この不具合現象を改善しました。
各接着剤の説明は以上となりますが、最後にそれぞれの特徴を表2にまとめました。
以上、加飾フィルム用接着剤の開発動向について紹介いたしました。
本コラムで紹介いたしました開発品は、東京ビッグサイトで2月1日から3日まで開催される
「新機能性材料展2023(コンバーティングテクノロジー総合展内の展示会)」の
機能性フィルム研究会ブースで展示いたします。
本展示会にご来場の皆様には、是非とも当社展示コーナーにお越しください。
最後までお読みいただきありがとうございました。