高機能性塗料コラム
第14回、環境にやさしい水性接着剤の提案です!
投稿日:2019/4/24
こんにちは。「こんな塗料できないの?」に私たちが答えます。
高機能性塗料設計技術ソリューションパートナーの加藤です。
前回コラムではブリスターパック及びブリスターパック用接着剤の
基本的な機能について説明いたしました。
2回目の今回は、ブリスターパック用接着剤の
最近の動向とそのバリエーションについて説明いたします。
〇ブリスターパック用接着剤の最近の動向
ブリスターパック用接着剤は印刷された紙の上に
ロールコーターやグラビアコーターで塗装されます。
塗料形態としては溶剤系と水系がありますが、
水系は低温(ヒートシール条件)での接着性や
印刷インキ密着性等の性能面で溶剤系に比べると劣っているため、
国内・海外ともに水系の市場は拡大しませんでした。
しかし、特にお隣の中国では、2015年の改定版環境保護法や、
2016年の大気汚染防止法の改正により、
VOC(揮発性有機化合物)排出規制が強化されたことによって、
水系への切り替えが加速され、
水系ブリスターパック用接着剤の性能向上にもしのぎが削られています。
〇ブリスターパック用の溶剤系接着剤と水性接着剤開発品の性能について
当社のブリスターパック用接着剤として、
国内や中国での実績がある溶剤系のBP#50シリーズと、
水系の新規開発品であるWB-8000シリーズの性能について、
他社品比較を含めて説明いたします。
ブリスターパック用接着剤は、インキ密着性の良い樹脂と、
プラスチック(PET,PVC等)への熱接着性の良い樹脂を
組み合わせて設計されます。インキ密着性の良い樹脂としては、
インキと相性の良いアクリル樹脂を使用され、
プラスチックへの熱接着性が良い樹脂としては、
プラスチックの材質に合わせて、
塩酢ビ樹脂やポリエステル樹脂等が使用されています。
接着性能としては、低温・短時間で熱接着できることが
生産性の観点からも好ましくありますが、
一般的に低温で熱接着性が良好な接着剤は、
接着剤を塗布したシートの積み重ね保管工程で、
「ブロッキング」というシート同士がくっついてしまう不具合現象が起こりやすくなります。
当社の溶剤系接着剤BP#50シリーズは、
130℃という低温ヒートシール条件での優れた熱接着性があり、
耐ブロッキング性も良好です。
また、高光沢であり、美しい意匠面が得られるという特長も有します。
一方、水系接着剤も基本的には溶剤系接着剤と同じように、
インキ密着性の良い樹脂と熱接着性の良い樹脂を組み合わせた設計となっております。
ただし、そもそも水系のためインキ面にも塗れ(濡れ)にくく、
また従来の水性樹脂原料では、熱接着性と耐ブロッキング性の
バランス取りが溶剤系以上に困難でありました。
そこで、当社では主成分である水性アクリル樹脂
の組成要因(分子量・Tg・SP値等)の最適化検討を行い、
接着温度は溶剤系BP#50シリーズよりも10℃高い140℃となりますが、
熱接着性・耐ブロッキング性等、溶剤系と比して遜色ない性能の水系接着剤を開発しました。
2018年、本水系接着剤をWB-8000シリーズとして、
当社のブリスターパック用接着剤のバリエーションに加えました。
近年の環境意識の高まりに合わせて、
ブリスターパック用接着剤の市場は今後も変化していくと考えられます。
当社ではこうした社会的なニーズに対し、
水性接着剤のような環境配慮製品で応えるとともに、さらなる接着剤機能の
高性能化も目指していきます。
2回に渡ってお送りしました「ブリスターパック用接着剤」はいかがでしたか?
次回は高機能性材料部の横溝にバトンタッチし、
自動車部品用の各種コーティング剤について説明いたします。