高機能性塗料コラム
第34回、折り曲げに耐える「技術」
投稿日:2020/12/7
こんにちは。「こんな塗料できないの?」に私たちが答えます。
高機能性塗料設計技術ソリューションパートナーの瓜生(うりう)です。
早速ですが、みなさんのスマートフォンは折り曲げられますか?
昨今のスマートフォンやタブレットは、デザインの多様性や
機能の差別化の観点から、繰り返し折りたたむことが可能な
フォルダブル(Foldable)ディスプレイを採用する機種が増加しています。
2020年現在、フォルダブルスマートフォンが数社から販売されていますが、
まだまだ高価であったり、初期不良等があったりと
市場を席捲するには至っていません。今後フォルダブルディスプレイは、
需要増を見込む一方で、ディスプレイの各パーツにおいて、
解決しないといけない課題がいくつかあるようです。
私たちは、コーティング剤メーカーとして、スマートフォンなどの機器メーカー、
フィルム基材メーカーおよびコンバーターの皆様におけるフォルダブルディスプレイの
生産・実用化に貢献すべく、様々なフォーミュレーション技術を駆使して、
日夜ディスプレイ用コーティング剤の高機能化に挑戦しています。
今回は、出来立てほっかほかの新製品であるUV硬化型の耐屈曲性ハードコーティング剤を紹介します。
耐屈曲性ハードコーティング剤に求められる性能は、もちろん耐屈曲性でありますが、
相反する機能であるハードコートとしての硬度(鉛筆硬度)
耐擦傷性(スチールウール耐性)も同時に求められます。
しかし、耐擦傷性を高めるために単純にUV硬化塗膜の架橋密度を高くすると、
耐屈曲性試験でクラックが発生しますが、今回紹介するハードコートは、
Infold(内曲げ)、Outfold(外曲げ)それぞれのフォルダブルディスプレイへ適用が可能です。
Infold(内曲げ)
Outfold(外曲げ)
図1.フォルダブルディスプレイの曲げ方
〇InfoldとOutfold向けコーティング剤の設計について
コーティング膜が受けるInfold(内曲げ)、Outfold(外曲げ)での大きな負荷の違いは、
折り曲げ部の伸縮性の違いになります。特にOutfoldの方が伸縮性が必要であり、
コーティング膜には、より高度な耐屈曲性が求められます。
なお、両者ともタッチパネルディスプレイであることも想定すると、塗膜硬度・耐擦り傷性が求められることは、
前述のとおりであり、Infold用、Outfold用コーティング剤の設計の考え方を以下に示します。
まず、Infold用コーティング剤については、比較的高硬度の樹脂を選択してもクラックが入りにくいですが、
塗膜が厚くなると、内部応力が高まることによるクラック懸念もあるために
推奨膜厚を低めに設定して5μm程度としました。
このコーティング膜は、耐擦傷性試験1kg荷重×1000往復でもほとんど傷が付きません。
他方、Outfold用コーティング剤は、塗膜硬度を重視すると耐屈曲性が著しく低下するので、
比較的柔軟な樹脂をベースに設計します。ただ、それだけでは耐擦傷性が悪いため、
中~高硬度の樹脂も併用していく必要があり、このフォーミュレーション調整が実用化のポイントになります。
なお、ベースの樹脂が柔軟なため、膜厚が薄いと凹み傷が目立ちやすくなることより、
推奨膜厚は厚めの15μm程度としました。Outfold向けでは膜厚を厚く設定することより、
表面の変形による凹みを軽減でき、傷痕としても目立たなくなります。
どちらのハードコーティング剤も、タッチパネル用途なので指紋が付きにくくなるような
耐汚染性(撥水撥油機能)や、ディスプレイの視認性向上のための
防眩性(アンチグレア機能)を付与することもできます。
最後にInfold(内曲げ)用、Outfold(外曲げ)用それぞれのスペックを記します。
「TOMAX FA-OF1/IF1」については、お客様がご使用の、またはご検討中のフィルム基材や構成など、
様々なご要望に応じたカスタマイズも可能です。
ぜひ、高機能性塗料設計技術ソリューションパートナーである私たちにご相談ください。
なお、12/9~12/11の3日間、東京ビッグサイトで開催される「新機能性材料展」に、
耐屈曲性ハードコーティング剤「TOMAX FA-OF1/IF1」を出展いたします。
展示会会場に足をお運びいただくことを希望いたしますとともに、現在のコロナ禍の時節事情もあり、
当社ホームページへのお問合せも、もちろん大歓迎であります。
展示会へのご来場、またホームページへのお問合せをお待ちしております。