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高機能性塗料コラム

第37回、日本でも、中国でも、塗料の環境対応、しっかり進めます!

投稿日:2021/3/15

 

こんにちは。「こんな塗料できないの?」に私たちが答えます。

高機能性塗料設計技術ソリューションパートナーの中村です。

 

今月は、当社製品における環境対応の取り組みの一例として、

2020年12月1日に施行された 「中国国家標準規格(以下、“GB規格”)」 の

車両用塗料の有害物質限度量の改正に対応するための

当社の自動車ヘッドランプ用塗料のVOC

(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)

含有量低減の取り組みについて、ご紹介いたします。

なお、本コラムにおいて説明する当社のVOC含有量低減塗料とは、

図1のエクステンションとリフレクターに塗装されているプライマーになります。

 

 

◇GB規格とは2)、3)、4)、5)  

 まず初めに、GB規格について説明いたします。

GB規格とは「中国国家標準化法」で定められた製品の技術基準で、日本のJIS規格(日本工業規格)に相当します。

GB規格にもJIS規格のように、「土木・建築」、「自動車」、「繊維」、「情報処理」などといった

分野ごとに規格が定められています。

GB規格には、大きく分けて強制標準(GB規格)と推奨標準(GB/T)があり、強制標準のGB規格は、

中国企業とビジネスを行う上で準拠しなければ、販売・生産・輸出を行うことが出来ません。

一方、推奨標準のGB/Tは、ガイドラインのような位置づけですが、GB規格に引用・参照されている場合や

政府通達があったとき強制力を発揮することがあります。

また、推奨標準(GB/T)には、国家標準では制定されていない特定の業種内で統一された「業界標準」、

省・自治体・直轄区で制定された「地方標準」、地元政府に受理された「企業標準」などがあります。

  

◇車両用塗料中の有害物質の制限値(GB24409-2009)の改正 

 当社の自動車ヘッドランプ用塗料で対応が必要になった車両用塗料中の有害物質の制限値(GB24409-2009)

の改正について、説明します。中国では大気中の汚染物質量が多いことが社会問題となっていました。

そこで大気汚染物質や温室効果ガスを減らす目的で2018年6月から

「青空防衛戦争に勝利するための3年間行動計画」が展開されました。

この計画が車両(乗用車、鉄道車両、オートバイ等)用塗料の厳しいVOC規制の背景となっています。

VOCとは、Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物のことで、

大気中で気体状になる有機化合物の総称であり、有機溶剤などが該当します。

VOCは、環境への問題だけでなく人の健康への影響が懸念されていることから、

環境省も自動車の炭化水素の排出量や各工場からのVOCの排出・飛散の規制や自主取組の促進、

各種検討などの施策を講じています。新規格(GB24409-2020)では、

塗料を系統(水性系・溶剤系・UV硬化系)、製品分類(使用用途)、

製品タイプ(プライマー・中塗り・トップコートなど)、塗装方法(スプレー塗装・その他)に細分類し、

分類ごとにVOC含有量の制限値やその他有害物質含有量の制限値

(ベンゼン、トルエン、ハロゲン化炭化水素など)が規定されました。

 当社の自動車ヘッドランプ用UV硬化型溶剤系スプレー塗料は、日本国内だけでなく、

中国での製造・販売もなされており(※)、

この中国での製造・販売分が2019年10月のWTO/TBT通報によって、

新規格の対象となることが判りました。

(※)中国では、関西ペイント㈱の中国グループ会社によって、当社技術供与塗料の製造がなされ、主に中国の日系ユーザー向けに販売されています。

表1は、GB24409-2020のUV硬化塗料に関係する部分の抜粋になります。

 

 

 当社の自動車ヘッドランプ用UV硬化型溶剤系スプレー塗料においては、

表1の赤枠部分の「非水系、スプレー塗装」の制限値に対応すること、即ちVOC含有量≦550g/Lにすること、

また配合からトルエン、キシレンを排除することが必要となりました。

もちろん、VOC低減のために溶剤を変更すると、樹脂や添加剤の溶解性に変化が生じることがあり、

基材への濡れ性、タレ性などの塗装作業性に加え、塗料の貯蔵安定性への影響が懸念されます。

 

◇VOC含有量について

 VOC含有量は、最終的には、中国の専門機関や税関などの測定結果が適用されます。

実測値なので、測定上のバラツキで、規格値を満たせないことが無いように余裕を考慮した計算が必要です。

GB規格のVOC含有量の計算方法を図3に示します。

 図3の計算式より、VOC含有量は塗料中の不揮発分含有量(NV:Non-Volatile)と密度が分かれば求まります。

現行品塗料(NV:40%、密度:0.967g/cm3)を用いたVOC含有量計算例を式(1)に示します。

 

VOC含有量=(1-40(NV:%)/100)×0.967(密度:g/cm3)×1000(換算値)=580(g/L)・・・式(1)

 

◇当社でのGB規格対応検討結果について

 実際に当社が取り組んだ検討結果を表2に示します。

 NVが40%である現行品は、VOC含有量(計算値)が580g/Lであり、

BTXEB(ベンゼン・トルエン・キシレン・エチルベンゼン)含有量もGB24409-2020の制限値を

超えていることから、VOC低減をするために、NVアップ(現行40%→44%→46%→50%)することと、

BTXEBフリー化による対応を検討しました。

 その結果、VOC含有量を新規格の制限値(550g/L以下)内にするためには、

NV:44%以上にする必要があることが判りました。ただし、NV:50%まで上げると塗装作業性、塗膜外観、

さらには、塗料の貯蔵安定性が悪化します。

このことから、VOC含有量の規格値から余裕を持たせた523g/LであるNV:46%とし、

BTXEBもフリー化した塗料を、GB24409-2020対応品として設定し、ユーザーに提案いたしました、

その結果、2020年12月1日のGB施行前に、本GB24409-2020対応品に切り替えていただき、

現在 問題なくご使用いただいております。

 

 以上、当社製品における環境対応の取り組みの一例として、中国のGB24409-2020への当社UV硬化塗料の

VOC低減の対応状況について、紹介させていただきました。

当社では、UV硬化塗料が速硬化・省スペース型であることによる生産性向上への寄与に加え、

省資源・省エネルギー型であることより、UV硬化システム自体が環境配慮性に優れた塗装・硬化システムである、

との考えにより、UV硬化塗料のさらなる普及のための製品開発を進めています。

 さらに、VOC低減によっても、その環境配慮性を向上させるべく、溶剤含有量のさらなる低減に加えて、

無溶剤化や水性化についても、積極的に取り組んでいきます。

 このような当社のUV塗料による環境配慮性と、さらに機能性の付与の取り組みついては、

株式会社 加工技術研究会の月刊誌「コンバーテック」においても、紹介されています6)、7)、8)、9)、10)  

この機会に、ご一読いただけば幸いです。

 

 最後までお読みいただきありがとうございました。

 

<参考文献>

1)辻正一:高機能性塗料コラム 「第26回、くるまの目にもお化粧を。」、

日本化工塗料ホームページ(参照2021/1/17参照)


2) 「中国VOC規制が2020年12月から施行されます」

一般社団法人 東京環境経営研究所ホームページ(2021/1/30参照)

3)「中国市場への視点 ~中国のGB規格について~」

中国ビジネスサポートサイト China Work ホームページ(2021/1/17参照)

4)「中国国家標準の概要とトラブル事例」

公益財団法人 横浜企業経営支援財団 海外現地レポートホームページ(2021/1/17参照)

5)「製品VOC含有量規制 Q&A

日中環境協力支援センター/北京JCE生態環境コンサルティング有限公司ホームページ(2021/1/17参照)

 

以下、6),7),8),9),10)は、コンバーテックの2020年11月号から2021年3月号までの連載

「UV硬化コーティング剤の概要と市場ニーズへの対応」であり、

下記リンク先より、バックナンバーの購入も可能です。

6) 塩田淳、奴間伸茂:「その1、塗料の基本 –塗料の機能性、塗料の乾燥~硬化について

   コンバーテック、pp82-86、(2020.11)

7) 遠藤幸典:「その2、UV硬化技術の優位性

   コンバーテック、pp76-80、(2020.12)

8) 遠竹浩二、横溝秀樹:「その3、紙・プラスチック成形材への適用事例

   コンバーテック、pp101-105、(2021.1)

9) 清水大介、嶋秀一:「その4、ディスプレイへの適用事例

   コンバーテック、pp69-73、(2021.2)

10) 瓜生孝幸:「その5、新しい市場ニーズへの対応技術について

   コンバーテック、pp70-73、(2021.3)

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