高機能性塗料コラム
第6回、真空蒸着用塗料について
投稿日:2018/7/18
こんにちは。「こんな塗料できないの?」に私たちが答えます。
高機能性塗料設計技術ソリューションパートナーの有谷(ありがや)です。
前回のコラムでは高機能マルチプライマーの性能と密着性確保技術のポイントに
ついてご説明しました。その際、金属蒸着にも密着するプライマーであることを
紹介しましたが、今回のコラムでは、その金属蒸着をする方法と、そこに使われる
真空蒸着用塗料について解説します。
当社の製品ブランドの一つに真空蒸着用塗料「BRIGHT」があります。
図1.「塗膜構成」に示した様に「BRIGHT」には、成型基材上に塗装する
アンダーコートと、金属蒸着上に塗装するトップコートの2種類があります。
図1.塗膜構成
図2.BRIGHT使用製品:自動車ヘッドランプ
金属蒸着の目的は、1.金属調の加飾をすること。2.機能性の付与(導電性など)です。
アンダーコートは、?基材の凹凸などを埋めて平坦な面にする(図3.)
②密着性を確保(二次耐久性の向上)するなどを目的に塗装されます。
トップコートは、?金属蒸着面の耐久性の付与、②意匠性を向上する(図4.)、などを目的に塗装されます。
当社の蒸着用アンダーコート・トップコートは塗装作業性、仕上り外観、機能性に優れており、
自動車ランプやアミューズメント機器などに広く採用されております。
図3.アンダーコートがないと鏡面にならない
図4.トップコート着色で意匠性向上
ここで真空蒸着とは、皆さんがよく耳にする「めっき」の一種であり、
素材に薄膜の金属を付ける技術になります。
「めっき」には図5.に示す様に、大きく分けると「湿式めっき」と「乾式めっき」の2つがあります。
図5. めっきについて
「湿式めっき」は、金属を化学的に溶かした溶液の中に素材を入れて、薄膜の金属を付けることです。
自動車のフロントグリルやエンブレム等で使われるクロムめっきが一般的によく知られています。
「乾式めっき」は、高真空下で金属を気化させて基材に薄膜の金属を付けることです。
これには2通りの手法があり、物理蒸着(PVD)は熱やプラズマにより
物理的に金属を気化させ基材上に成膜させる手法です。
化学的蒸着(CVD)は膜を形成させたい金属元素を含有した気体中で、
熱や光、プラズマなどにより対象素材の表面で化学反応を起こさせて金属を成膜させる手法です。
当社の真空蒸着用塗料「BRIGHT」が使用される自動車ランプやアミューズメント機器は、
主に物理蒸着の中の真空蒸着とスパッタリングで金属を成膜します。
真空蒸着、スパッタリングとも高真空化で成膜するために、
真空容器(釣鐘容器はベルジャーと呼ばれる)と排気装置(減圧用ポンプ等で構成)
で構成された装置が用いられます。
①真空蒸着
真空蒸着は図6.の様に高真空化で熱源(フィラメント等)により
金属を蒸発させ塗装板に金属を成膜させる方法です。
図6. 真空蒸着機
②スパッタリング
スパッタリングは図7.の様に高真空化中にアルゴンガス(不活性ガス)を入れ、
ターゲット(金属インゴット)と塗装板に直流高電圧をかけるとアルゴンガスがイオン化し
ターゲットに高速で衝突し金属をはじき飛ばし、塗装板の表面にこの金属薄膜が形成されます。
図7. スパッタリング機
真空蒸着とスパッタリングにはそれぞれ下記の様な特徴があり、
それぞれの特徴を活かし使い分けられ、自動車用ランプやバックミラー、
メガネのレンズ、DVD、食品包材等様々な製品を作るために用いられています。
表1.真空蒸着とスパッタリングの特徴
以上、今回は真空蒸着について解説させていただきました。
次回は、当社の真空蒸着用塗料「BRIGHT」の紹介をさせていただきます。
また来月の8月14日が「特許の日」と言うこともあり、
当社の創業者である堀田瑞松が取得した日本特許第1号についても
紹介させていただきます。