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高機能性塗料コラム

  

 第29回、失敗は成功の元 ~失敗に学ぶ~

投稿日:2020/7/20

 こんにちは。「こんな塗料できないの?」に私たちが答えます

高機能性塗料設計技術ソリューションパートナーの遠竹です。

 

 前回のコラムでは紙の表面加工の概要についてお話ししましたが、

今回はその中でも「UVニス加工」にフォーカスし、開発の経緯、

失敗と改良の工夫についてお話しさせていただきます。

 

◯表面加工がUV化に至るまで

 前回のコラムでお話ししたように、表面加工は、刷毛塗り→ビニル引き→ラミネート加工→プレス加工→UVニス加工の出現順での新しい加工方式が実用化されてきました。(もちろん、ビニル引き、ラミネート加工、プレス加工は、現在もその特長を生かして多く使われています)

使用される塗料についても、その時代背景に合わせ、溶剤系塗料から水性塗料への移行もなされ、特にプレス加工の使用されている塗料のほとんどが水性ニスと言えるでしょう。他方、溶剤系塗料においては、熱乾燥(ラッカー~熱硬化)型から、UV(紫外線)硬化型塗料への進化がなされ、またUV硬化型ゆえに実用化が可能となった低VOC化(ハイソリッド化→無溶剤化)も進んできましたが・・・

 

UV硬化型塗料が市場で認知され、普及していった最大の理由は、UV(紫外線)を照射することで瞬時に硬化する超短時間硬化性ゆえです。

これによりラインスピードはプレス加工に比べると倍近くまで上がり、生産性は大幅に向上しました。

 

◯紙用UV硬化型コーティング剤の構成成分について

 一般的なUV硬化型コーティング剤として、グラビアコーターなどで使用される「UVニス」の構成成分について解説します。

主な成分としては、UV重合性モノマー・オリゴマーやUV重合開始剤などのUVで硬化する成分、さらにポリマー成分や滑り剤などの添加剤で構成されており、それぞれの役割は以下のとおりです。

 

・UV(光)重合性のモノマー(低分子量)成分・・・

 硬化性、硬度などを付与。塗料粘性調整(反応性希釈剤としての低粘度化成分)。

・UV(光)重合性のオリゴマー(中分子量)成分・・・

 強靭性(硬度と柔軟性のバランス)、基材密着性、耐薬品性などを付与。

・UV(光)重合開始剤・・・

 UV照射により光重合性モノマー・オリゴマーを重合(架橋)させる。

・ポリマー(高分子量)成分・・・

 柔軟性や基材密着性を付与。塗料粘性調整(モノマーとは逆の高粘度化成分)。

・添加剤・・・

 レベリング性や、耐摩耗性の向上のための滑り剤、塗装作業性向上のための消泡剤など。

・溶剤・・・

 塗料粘性調整の希釈剤(無溶剤型UV塗料では、溶剤は含まない)

 

 これらの組み合わせにより、UV硬化型コーティング剤は作られますが、それぞれ選定する

UV重合性モノマー・オリゴマーやポリマー成分、UV重合開始剤の種類によって性能はさまざま。 

 

開発当初は失敗の連続でした・・・

 

失敗その① お客様の声 「こんな臭いの使えない!」

 紙用のコーティング剤となれば、用途は多岐にわたります。中でも「紙器」と呼ばれる紙箱は世の中で広く

使われており、お菓子や食品(カレーやシチュー)の紙箱の外側印刷面のツヤニスとしても多く使われます。

そこで、食品の包装となると、紙箱の外面と言っても気になるのが「におい」です。

従来の「ビニル引き」や「プレス加工」では無かった「におい」が、「UVニス」が導入された初期に問題となりました。これはUV硬化型コーティング剤特有のもので、原因は、UV硬化前に紙に吸い込んだ塗料中のモノマーや重合開始剤のUV硬化時の反応が不十分であることによるモノマーや開始剤そのものの「におい」が残るためです。

 当社では、反応性の良いUV重合性のモノマー・オリゴマー、臭気の少ない重合開始剤を選択することに加え、

紙への吸い込みを減らす工夫として、吸い込み防止成分を見出し、それを適用することで「におい」を低減させることができました。また、この吸い込み防止手法によって、塗膜の肉持ち感を向上させることもできました。

 失敗その② お客様の声 「色が変わってるよ」

 紙用のコーティング剤に限りませんが、UV硬化型コーティング剤の本質的な欠点として、UV照射後の「黄変」が挙げられます。これはUV重合開始剤の影響が大きく、1990年代は、蛍光染料などを用いて「黄変」を消す(黄変を薄める)処方が取られておりましたが、蛍光染料(蛍光増白剤)は、特に食品包装用途では、紙箱の外面ツヤニスの原料としても敬遠されるようになりました。

 当社では、色々なUV重合開始剤の中から「黄変」が少なく、もちろん硬化性(重合開始能)も良好で上述した

「におい」も少ないものを選定、蛍光染料を使わない無黄変タイプのUV硬化型コーティング剤を開発しました

  

失敗その③ お客様の声 「箱にしたら割れちゃうよ」

 紙用のコーティング剤は、紙に塗られ乾燥(硬化)させた塗工紙として箱加工されますが、箱に加工した際の折り目(罫線)部分の「罫割れ(けいわれ)」という塗膜クラックが問題になることがあります。

 

 紙用コーティング剤は、塗装→乾燥(硬化)スピートが速く、特にUV硬化型コーティング剤は、UVで瞬時に固まる必要があります。そのため短時間で硬化するように反応性をあげ、固まりすぎると、箱に加工した際の「罫割れ」が発生してしまいます。それを解決するために反応性の良いUV重合性モノマーに、柔軟性のあるUV重合性オリゴマーとポリマー成分を組み合わせることで、UV短時間硬化が可能で、「罫割れ」も発生しないUV硬化型コーティング剤を開発しました。


  

 このように数々の失敗と改良により生み出された開発品は、開発から20年以上が経過した現在もお客様にご愛顧いただいているロングセラー製品であります。紙用のUV硬化型コーティング剤で培った技術は、その後、機能性フィルム用コーティング剤「TOMAX」に適用されて、現在の当社UV硬化型コーティング剤の主力製品を支える技術バックボーンとなっております。

 

 いかがでしたか。2回にわたり、紙用のコーティング剤についてお話しいたしました。

近年、新聞用紙や印刷・情報用紙の生産量は、情報収集手段が紙媒体からスマートフォンなどの電子媒体へと移行していることにより、その減少傾向が顕著でありますが、他方、本コラムの紙用コーティング剤が適用される紙箱(紙器)用の板紙の需要は堅調さを維持しています2)

紙は、「再生産可能資源(枯渇資源ではない)」、「カーボンニュートラル」、「生分解性」、そして「リサイクル可能 」という特徴を有する環境素材です3) 。 

 今後も、このような環境性能に優れた紙に対し、コーティング剤として付与できる機能(価値)を検討していきたいと考えています。また、今後のコラムにおいて、“機能紙とコーティング剤”というテーマでのお話しをさせていただければ、と思っています。

 

それではまた次回。

  

<参考文献>

1)瀬古健治:関西ペイント 塗料の研究 「環境対応塗料技術 -光硬化塗料-」 138(2002)

 

2)日本製紙連合会 ホームページ 「製紙産業の現状、紙・板紙」

 

3)野田貴治, 内村元一:「素材としての紙の特徴とその可能性」

   日本包装技術協会 第222回包装資材研究会資料(2018.4.20)

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