高機能性塗料コラム
第44回、金属の輝きと質感を引き出す、三次元転写箔用塗料!
投稿日:2025/1/21
こんにちは。「こんな塗料できないの?」に私たちが答えます。
高機能性塗料設計技術ソリューションパートナーの木村です。
最近、SDGs(注1.)が人の暮らしに浸透し、環境意識が高まっているのを感じます。
CO2排出量削減のために、塗装レスの加飾技術に興味を持つ方も増えてきました。
加飾とは、検索1)すると「飾りを加えること。モノに意匠を付与すること」
と記載されています。
以前、本コラム第40回 「転写させることで・・・」にて、
加飾成形転写技術について紹介をしました。
今回は、その技術をさらに発展させた「金属意匠の三次元加飾転写技術」について
紹介します。
世の中には多くのプラスチック製品があります。
安価で軽量なプラスチックは、私たちの生活に欠かせないものです。
しかし、その見た目に皆さんはどのような印象を持ちますか?
一般的には単色で、質素や物足らなさを感じることが多いでしょう。
それに対して、金属の見た目は光沢があり、上品さや高級感が得られますが、
金属は重く、モノによっては高価で、加工が難しいなどの課題もあります。
もしプラスチック成形品に金属調の意匠を付与できたら、安価で軽く、
上品な外観を持つ成形品ができます。
そうすれば、プラスチックと金属の良い所を取り入れることができますね。
これまで金属調意匠の加飾はホットスタンプによる熱転写技術で行われてきました。
(熱転写については第19回 「文字が金だと高級に見えますよね?」を是非ご覧ください)
以前のコラムで紹介したように、成形品に対して、後工程で金属調意匠を加飾することは難しくありません。
しかし複雑な形や凹凸のある三次元の形状になると難易度が一気にあがります。
そこで当社は立体成形物への加飾転写を可能とした「金属調意匠の三次元加飾転写箔」を開発しました。
従来の加飾転写箔と新規加飾転写箔を使用して立体成形物に加飾転写した見本を示します(図1)。
従来品は、加飾成形後にクラックが発生しています。
蒸着金属として使用するアルミニウムやクロムが連続膜を形成するため、
成形加工時に塗膜が延伸すると、蒸着層が割れてしまいます。
一方、開発品に使用しているインジウムやスズは、金属膜が不連続膜となるため、
延伸しても島と島の間隔が広がるのみで金属膜が割れることなく、
巨視的には、複雑形状にも金属意匠を保ったまま、加飾成形が行えます2)(図2)。
このような意匠を再現させることに欠かせないのが、プライマーの存在です。
ここからは、三次元加飾転写箔用のプライマーについて紹介いたします。
なかでも、金属調意匠向けに開発した「TOMAX FS-1055」は、
延伸追従性があるため、三次元加飾成形においても金属蒸着膜にクラックが発生しません。
加飾転写箔で金属調意匠をご検討中のお客様がいらっしゃいましたら、ぜひ当社までご相談ください。
今回は、複雑な成形品に対応できる「金属調意匠の三次元加飾転写技術」について紹介しました。
本コラムで紹介した「金属調意匠の三次元加飾転写箔」は、
2025年1月29日から31日まで東京ビッグサイトで開催される
3Decotech展の加飾技術研究会共同出展ブースに展示します。
ご来場の際はぜひお立ち寄りください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
<参考文献>
1) 加飾技術ナビ「加飾とは?」(参照 2025/1/10)
2) 羽切教雄 日本印刷学会 第55巻3号(2018) 185-189
<用語説明>
注1. SDGs:SDGs(持続可能な開発目標)は、国際連合が採択した2030年までに達成を目指す
17の目標から成り立っています。これらの目標は、貧困の撲滅、教育の質の向上、環境保護、経済成長といった、
持続可能な社会を実現するための具体的な指針を提供しています。
これらの目標は、社会、経済、環境の3つの側面から持続可能な開発を推進することを目的としており、
国や地域、企業、市民などが協力して取り組むことが求められています。
SDGsの達成は、未来の世代のために持続可能な社会を築くために重要です。
注2. UVアフターキュアタイプ:加飾成形後に紫外線照射して硬化させる方法。