高機能性塗料コラム
第24回、あの“ぎらつき”がJIS化されたんです!
投稿日:2020/2/25
こんにちは。「こんな塗料できないの?」に私たちが答えます。
高機能性塗料設計技術ソリューションパートナーの清水です。
今回は、第8~9回のコラムでお話ししたディスプレイへの外光の
映り込み防止のために用いられるアンチグレアタイプの防眩フィルムで
発生する“ぎらつき”について、新たにJIS化された評価方法と合わせて、
詳しく解説したいと思います。
「第9回、スマホを見ていて目が疲れませんか?」のおさらいとなりますが、
“ぎらつき”はアンチグレアフィルムの凹凸形状により、
ディスプレイの画素光(R(赤)・G(緑)・B(青))がランダムに
散乱・屈折されて、画素単位の輝度差を私たちの目が干渉縞として感じる現象です。
“ぎらつき”が発生すると、視認性の低下や眼精疲労を招いてしまいますが、
みなさんは“ぎらつき”を経験したことはありませんか??
実はアンチグレアフィルムを使う時だけじゃなく、
ディスプレイの表面に凹凸があると“ぎらつき”は発生するんです。
図1は、モデル実験としてディスプレイに水滴を垂らしたものです。
水滴が凸レンズとなって、液晶の画素が拡大され、輝度がばらついているのがわかると思います。
また、ディスプレイに皮脂などの汚れや異物が付着して、
表面に不均一な凹凸が形成されても“ぎらつき”が発生します。
このように、表面凹凸によって防眩性を発揮するアンチグレアフィルムでは、
防眩性に加えて”ぎらつき”も大事な視認性能であり、近年“ぎらつき”評価の重要性も高まっています。
しかしながら、今まで“ぎらつき”の良し悪しは、目視による評価がほとんどでした。
図2は“ぎらつき”が異なるアンチグレアフィルムの画像です。
どちらがぎらついて見えるでしょうか? (写真では分かりにくいですが、正解は右側です。)
このような官能評価だと、測定者や測定環境により結果が異なったり、細かい差の判定が出来なかったり、
といった欠点がありました。この問題を解決するため、“ぎらつき”の度合いを数値化するJIS規格が
昨年(2019年12月)に制定されました。(JIS C1006:2019、ディスプレイのぎらつき度合の求め方) 1)
この規格は、ディスプレイ表面(ディスプレイ+フィルム)を撮影・演算した
ぎらつきパターンの度数分布から、輝度(階調)の不均一さを“ぎらつき値”として計測する方法です。
図3に“ぎらつき”の測定イメージ図を示します。
上段が撮影されたぎらつきパターン、下段がぎらつきパターンから得られた度数分布になります。
度数分布の横軸は左端ほど低い階調で、右に行くにつれて高い階調を表し、
度数は各階調の画素個数を示しています。
目視評価で“ぎらつき”が小さいもの(図3左)は、階調のばらつきがほとんどないシャープな度数分布が
得られ、ぎらつき値は小さくなります。一方で“ぎらつき”が大きくなるにつれて(図3右)は、
度数分布は幅広くなり、階調のばらつきも大きくなっていきます。
つまり、ぎらつき値が低いほど輝度のばらつきがない、“ぎらつき”が少ないと言えます。
JIS C1006に準拠した装置(SMS-1000、図4 2))で、“ぎらつき”を測定した
一例を図5に示します。目視評価で“ぎらつき”が悪いアンチグレアフィルム(図5左)は、
輝度のばらつきを示すぎらつき値が12.2%と高い値となっています。
一方、“ぎらつき”がほとんど発生しないアンチグレアフィルム(図5右)は、
ぎらつき値が6.3%と、目視評価の優劣を数値で判断することができます。
ぎらつき値が10%未満であれば、目視評価の“ぎらつき”は良好になると言われており 3)、
この装置を用いることで、僅かな“ぎらつき”の差も数値的に評価できるようになります。
以上、新たに制定された“ぎらつき”のJIS化について、解説してきました。
来月は、このJISを用いて“ぎらつき”の原因解析を行った結果についてお話ししていきます。
<参考文献>
1) JIS C 1006(2019)、ディスプレイのぎらつき度合の求め方
2) “事業内容 | アフロディ株式会社”、アフロディ株式会社ホームページ(参照 2020/2/3)
3) 遠藤幸典、清水大介、嶋秀一:塗布と塗膜、7[4]、18-23 (2018)