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高機能性塗料コラム

  

 第28回、紙は長ーい、友だち。

投稿日:2020/6/22

 こんにちは。「こんな塗料できないの?」に私たちが答えます

高機能性塗料設計技術ソリューションパートナーの遠竹です。

 

 早速ですが、みなさんの身の回りにあるお菓子やカレーが入っている

紙製の箱は、紙の業界では紙器と呼ばれます。

 

この紙器の表面には塗料(ツヤニス)が塗られているって知っていますか?

 

 まずは下の写真をご覧ください。


 左側の黒く印刷した紙に対し、右側は「表面加工」と称する印刷面上の保護層が施されています。

「表面加工」と一口にいっても、いろいろな方法があり、印刷と同時にツヤニスがロール塗装されて

インキの保護と光沢を付与する一番ベーシックな方法から、ツヤニス塗装後にステンレス板で熱圧着し、

より平滑な表面にする方法、ツヤニス塗装ではなく、フィルムと貼り合わせて高級感を出す方法など様々です。

 

 表面加工とは文字通り「表面」を「加工」する方法。

商品の顔とも言える「パッケージ」は消費者の購買意欲を掻き立てる重要な役割を担っており、

「表面」の仕上がり性と「加工」コストを考慮し、どの表面加工をチョイスするかが重要です。

 

 では、具体的にどのようなところに使用されているでしょうか。

お菓子のパッケージを例に取ると、ディスカウントストアなどで販売されている安価なお菓子は

「ビニル引き」が多く、スーパーやコンビニで販売されているブランド菓子には、「プレス加工」や

「UVニス加工」が、お土産用の地方限定お菓子などには「ラミネート加工」が使用されることが多いようです。

※「表面加工」方法の「ビニル引き」、「プレス加工」、「UVニス加工」、「ラミネート加工」の解説については、後述します。



そして、その歴史を紐解いてみると、紙への光沢や耐傷つき性という基本的な性能の付与も含め、

・加工方法としての生産性向上、意匠性の向上・バリエーション拡大

・コーティング剤としての進化(有機溶剤系→水系、熱乾燥→UV硬化)

 機能性の向上が、時代の要求によって、なされてきました。

今回は、そんな紙の表面加工について、その歴史と加工方法による違いをお話しさせていただきます。

 

1.紙の表面加工の歴史2)

 紙の表面加工の歴史は古く、日本で初めて紙にツヤニスコーティングが行われたのは明治12年頃。

当時は松脂とアルコールを混合したものを刷毛で塗装しておりました。

戦後、機械によるロール塗装が行われるようになり、昭和27年頃には塩化ビニル樹脂を主成分とした

コーティング剤による「ビニル引き」が広く用いられるようになりました。

※現在のロール塗装用コーティング剤の大半がアクリル樹脂系であるのにも関わらず、

   今でもこのロール塗装方法が 「ビニル引き」と呼ばれているのは、その名残です。

 

 そして、高度経済成長期の昭和35年頃には、紙とフィルムを貼り合わせた「ラミネート加工」が出始め、

高級な美粧加工紙として、一般消費者の目を引くことになります。

その後、「ビニル引き」から発展した方法として、塗膜に金属(ステンレス板)の鏡面を押し付けて光沢を出す

「プレス加工」が普及、昭和38年以降は、連続プレス加工が可能な「エンドレスプレス機」が出現したことで、

飛躍的に生産性が向上し、大量消費社会に応えられる表面加工法として確固たる地位を得ました。

さらに、平成に入り、より生産スピードが可能な「UVニス加工」へと発展していきます。

 

2.それぞれの表面加工の特徴について

 「ビニル引き」、「ラミネート加工」、「プレス加工」、「UVニス加工」という

4つの表面加工のそれぞれの特徴を解説いたします。

 

◆「ビニル引き」 

 ロール塗装で溶剤系や水系のツヤニスを塗装し、乾燥して仕上げるベーシックな加工法で、「塗り加工」

とも呼ばれる。低コストの加工方法であるが、光沢や耐摩耗性面では、後述の「UVニス加工」より劣る。

通常の光沢ニスに加え、マット調のマットビニールもある。

 

◆「ラミネート加工」 

 ツヤニスの代わりにPETやOPPなどのフィルムを熱と圧力により紙と貼り合わせる加工方式。

フィルムへの接着剤コーティング➝紙とラミネートをインラインで連続して行う従来からの方法に対し、

最近は、フィルムに接着剤が塗装済みのプレコートフィルムを使った「サーマルラミネート加工」が増えている。

※図4は、「サーマルラミネート加工」の工程を示す


なお、「ラミネート加工」は、意匠が良い反面、後加工性(ホットスタンプやサック貼りなど)が劣る。 

 

◆「プレス加工」 

 前述の「ビニル引き」と同様、ロール塗装、乾燥までは同じ工程であるが、

直後にエンドレスプレスと呼ばれる連続した帯状の金属鏡面板と熱圧着させることで、

金属鏡面の光沢と平滑性を塗膜に転写させるというもの。光沢も高く、仕上がりも平滑でキレイだが、

表面が傷つきやすいことや加工スピードが遅いことが難点。

 

◆「UVニス加工」 

 UV(紫外線)硬化タイプのツヤニスを使用する。塗装方法は、「ビニル引き」と同じく、ロール塗装や

グラビアがあるが、乾燥後にUVを照射させ、瞬時にツヤニスを硬化させる。これにより大幅なスピード

アップが可能となる。高光沢かつ耐摩耗性も良好であるが、「プレス加工」に比べると、表面の平滑性が

やや劣ることや未反応UV成分の臭気が問題となりやすい。

 

 

それぞれの表面加工における性能を比較すると以下の通りとなります。

 

    表1.それぞれの表面加工による性能比較

 

 こうして見ると、「UVニス加工」が光沢も良好で、耐摩耗性、耐ブロッキング性、耐熱性なども優れています。

また、上述のとおり、高生産性の表面加工法であり、省資源・省エネルギーの塗料硬化システムとして、

紙用途以外にプラスチック用途でも実用展開が行われています。3)

 次回は表面加工の中でも、この「UVニス加工」にフォーカスして、

当社での開発の道のりやトラブルの解決事例について説明したいと思います。 


次回もお楽しみに。

 

<参考文献>

1)日本製紙連合会ホームページ 「紙の種類、紙器用板紙」

2) 塩田淳、遠藤幸典:色材協会誌91 [9] (2018)292-297「紙用コーティング剤の基礎と、その機能性付与について」 

 

  J-STAGEページ

3)横溝秀樹:当社高機能性塗料コラム 「熱硬化塗料からUV硬化塗料へ」

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