高機能性塗料コラム
第36回、色の三原色から調色まで
投稿日:2021/2/15
こんにちは。「こんな塗料できないの?」に私たちが答えます。
高機能性塗料設計技術ソリューションパートナーの松田です。
前回と今回の連載で、塗料(塗膜)への「色」という
加飾機能(付加価値)を与えるための重要技術である
「調色」についてのお話をさせていただこう、と思い・・・
前回の「第35回、日本で虹は7色ですが・・・」において、
色に関する基本のお話として「色彩と日本人」、
「色の見え方」についての説明をいたしました。
今回、いよいよ「調色」のお話しをするにあたり、
もう少しだけ、色に関する基本のお話しである
「三原色」と「色材」についての説明を最初にさせていただき、
それから、本題の「調色」、それも当社主要製品の一つである
『カラークリアーの調色方法』についてのお話しさせていただきます。
まず、色には「光の三原色」と「色の三原色」がありますが、ご存じですか?
似たような言葉ですが、簡単に違いについてお話しいたします。
◇光の三原色とは1)2)
光の三原色とは、光の色に関する三原色です。赤 (Red) ・緑 (Green) ・青 (Blue) の
三色で成り立っており、「RGB」と記載されることが多いです。
光を発するものに関して使われており、身近なものではスマートフォンやテレビなどのディスプレイでは、
赤・緑・青の光を発する画素の発光を調整して様々な色を発現しています。
この場合の色の調整(調色)は、光の色を足していくことで行われるため、加法混色といわれています。
光の色を加えるほど明るくなり、3つの色の光が混ざると白色光になります。(図1)
◇色の三原色とは1)2)
色の三原色は、水色に近い青緑(Cyan)・赤紫 (Magenta) ・黄 (Yellow) の三色で成り立っています。
先ほどの光の三原色とは補色の関係(R⇔C、G⇔M、B⇔Y)にあります。
絵の具などの着色物質の混合に関して使われており、身近ではインクジェットプリンターのカラーインキや、
雑誌のグラビアカラー印刷などで、これら三原色を組み合わせて様々な色を表現しています。
この場合の色の調整(調色)は、色を足していくほど明るさが減って黒に近づくことから、
減法混色といわれています。塗料における色の調色は、この方法を用います。
黒を加えて「CMYK」と記載されることもあります。(図2)
◇塗料の色材について
洋服、自動車、建物、携帯電話など、日常で目にする様々な物の着色に用いられているのが「色材」です。
色材とは、「色の原材料」のことで、大きく「染料(Dye)」と「顔料(Pigment)」の2つに分けられます。
どちらも色のついた粉末ですが、染料は水や油に溶け、布や紙などの繊維の間にしみこんで色を染めて、
繊細な色合いや発色を表現できますが、光や水に弱いという性質を持っているのに対し、
顔料は水や油に溶けず、バインダー(定着剤)を加えて塗ることでくっきりと鮮明に素材表面を着色します。
また、堅牢性(光や風雨、温度変化に対する耐久性)に優れます。
身近なものでは、プリンターのインクにも、染料インクと顔料インクがありますね3)。
当社で扱っている自動車の部品用塗料は、塗膜の堅牢性(耐久性)が必要不可欠であるため、
色材として顔料を用いております。また、塗料の色材としては、通常の着色顔料に加え、
光輝材と呼ばれているメタリック顔料、パール顔料などもあります。
◇塗料による意匠性付与
本来、塗料を塗って着色するのは、基材表面に意匠性を付与することが目的であり、
基材を隠蔽するのが一般的です。例えば、画一的で安物に見えるプラスチックの表面を、
色鮮やかな塗装で被覆して高級感を与えることが出来ます。
また、特殊な例として、当社のカラークリアー塗料の様に、アルミなどの金属蒸着膜で基材を隠蔽した上に
非隠蔽性の薄膜塗装(4~6μm程度)を施して、
金属調の明るい外観を活かした意匠性付与もあります。(図3)
高い透明性と高彩度の色を発現できることが特徴ですが、非隠蔽性の塗膜であることから、
調色には特有の難しさがあります。主に自動車のヘッドランプ内部の意匠性付与や
アミューズメント機器の装飾部品などで使用されており、
塗料タイプとしては熱硬化タイプとUV硬化タイプがあります。
詳しくはこちらの「製品情報」よりご確認いただけます。
◇カラークリアーの調色方法
次に、色見本を用いたカラークリアーの調色方法について説明いたします。
図4に簡単な調色作業の流れを示しました。基本的な流れは通常の着色塗料の調色と同じなのですが、
カラークリアーは非隠蔽性の塗料であるため、通常塗料の調色には無い、特有の注意ポイントがあります。
<注意すべきポイント>
・③の塗装時には、明度を合わせるというのが1番の肝であり、塗装技術が求められます。
カラークリアーは、同じ塗料を塗装しても、下地の影響や膜厚の違いにより、少しでも明度が違っただけで、
全く別の色に見えてしまい、求める色見本との差を見誤ることになりかねません。
・④の色を比較する時には、求める色見本と正面色、底色を見比べた時に合致していることを確認すること。
また、違った光源で比較した時に2色性(図6)がないことを確認することです。
差が出てしまうようであれば、使用する顔料等を再検討し、見本との差を詰めていきます。
以上、2回にわたって「色」と「調色」についてお話しさせていただきました。
当社は、高い透明性と高彩度を実現するカラークリアー塗料をはじめ、
様々な色彩のプラスチック用塗料に関して、経験と実績に基づく高度な調色技術を保有しております。
機能性はもちろんのこと、さらに商品価値を高めるために、
お客様のご希望に沿った色彩をご提案させていただきます。
「こんな塗料できないの?」にレスポンス良くお応えしますので、
特にカラークリアーの調色は、私たちにお任せください。
<参考文献>
1) やさしい塗料読本シリーズ“④やさしい塗料読本《色彩 色いろいろ編》”、
株式会社カンペ・アイ・エス・エス(1995.改定第3刷)
2) (一社)色材協会 “色彩工学ハンドブック”、朝倉書店(1989)
3) “「顔料」と「染料」の違いとは”、TRANS.Biz WEBマガジン(参照2021/1/27)
その他・・・
前回のコラムでも、紹介しておりますが、当社が加盟している関東の塗料メーカーお仲間の商工組合である
関東塗料工業組合のホームページの情報ライブラリーでは、
以下のような「色」や「色材」に関するコラムが掲載されています。(参照2021/2/12)
タイトルに興味をもたれた方は、是非 覗いてみてください。
また、前回コラムご紹介以降では、一番最後の“シクラメンの花の色”が追加されました。