高機能性塗料コラム
第17回、塗装から貼るへ
投稿日:2019/7/16
こんにちは。「こんな塗料できないの?」に私たちが答えます。
高機能性塗料設計技術ソリューションパートナーの横溝(よこみぞ)です。
7月になり、本格的な夏の季節へ変わります。
今年は少し早い海の日でしたが、夏は暑い方が「夏だ!」と
感じる事が出来て良いと私は思いますが、
近年は地球温暖化の影響か、夏の天候変化も激しくなってきていますので、
熱中症には注意してください。
さて、今回は、5月の「メッキから蒸着へ」
6月の「熱硬化塗料からUV硬化塗料へ」、に続く3回シリーズの最終回として、
通常の塗装方法が変わりつつある現状をお伝えします。
今回のキーワードは、「塗装から貼るへ」です。
「貼る」というと、どのようなイメージを持ちますか?
「シールを貼る?」、「接着剤を用いて物と物をくっつける?」
見方を変えれば色々と思い浮かびますが、
簡単に言うと「塗料をコーティングしたシールを貼ることで、塗装と同じ意匠や性能を持たせる」です。
その背景には、環境面への配慮
(地球温暖化の原因である二酸化炭素排出量やVOC排出量の低減への貢献)があります。
塗装を行うことは、製品を大量に生産できるというメリットがありますが、
その反面、製造工程においては塗装工程に加えて、乾燥・焼付工程が必要なため、
製造時間やエネルギーコストがかかるというデメリットがあります(図1)
図1,従来の塗装工程
そこで近年注目されているのが、今までスプレー塗装していた工程を
あらかじめ塗装されたフィルムを貼る工程へ替える”加飾成形工法”なのです。(図2)
図2,塗装したフィルムを成形と同時に貼り付ける加飾成形工法
「どうやってフィルムを貼るの?」と思われる方もいらっしゃると思いますので、
いくつか工法を紹介します。
「貼る」と言っても、コーティングされたフィルム自体を貼る工法と、
コーティングされたフィルムを貼った後にフィルムをはがして塗膜を転写させる工法があります。
さらに、成形法の違い(In-Mold or Out-Mold)もあり、図3に、これら加飾成形工法の概略図を示します。
図3,各種加飾成形工法の概略図
「貼合」か「転写」か、そして「一次加飾(In-Mold)」か「二次加飾(Out-Mold)」か、
は成形対象品にとって、どの加飾成形工法が最も合理的であるか、によって選択されます。
加飾成形工法により、塗装と同じ意匠や性能が得られれば、
製造現場では工程短縮・省エネルギー・環境負荷低減などのメリットが多くあります。
ただし、塗装フィルムの作製工程(フィルム購入の場合はそのコスト)や
設備のイニシャルコストが必要となりますので、現状と照らし合わせ、
コンパクトでクリーンな次世代製造ラインをお考えの際には、おおいに検討の価値がある
システムであると考えます。
当社では、さまざまなフィルム用コーティング剤を取り扱っており、上述の加飾成形用としても、
「Nippon kako」×「Decoration」をコンセプトに、「TOMAX NXDシリーズ」を上市しております。
「TOMAX NXDシリーズ」は、プラスチックフィルム塗装に好適であり、
加飾成形工法の環境配慮性や生産性という特長にもマッチした省エネルギー・省スペース塗料で、
短時間硬化性を有するUV硬化塗料のラインナップとなっています。(表1)
表1,TOMAX NXDシリーズのラインナップ
なお。加飾成形やその工法用塗料については、以前のコラムでも「加飾フィルム用コーティング剤」として、
解説しています。また、「UV硬化塗料」についても、前回の6月コラムで解説していますので、
以下のコラムも覗いてみてください。
・高機能性塗料コラム「第10回、パソコンも自動車も飾り付けが大事。」
・高機能性塗料コラム「第11回、硬いのに伸びる。そんなのできるの?」
・高機能性塗料コラム「第16回、熱硬化塗料からUV硬化塗料へ」
今後、この”塗膜を貼る”技術は更に進化して、
「貼るから成形へ」と変わっていくことが検討されています。
それについては、またの機会に紹介したいと思います。
さて、次回については・・・
これまでのコラムでは、最新の塗料や塗装システムの解説をしてきましたが、次回は趣向を大きく変え、
塗料の歴史をさかのぼってトラディショナルな塗料を取り上げてみましょう。
英語名では「Oleoresinous Varnish」という油ワニス塗料のお話しを当社代表の塩田が紹介いたします。
お楽しみに。