高機能性塗料コラム
第16回、熱硬化塗料からUV硬化塗料へ
投稿日:2019/6/17
こんにちは。「こんな塗料できないの?」に私たちが答えます。
高機能性塗料設計技術ソリューションパートナーの横溝(よこみぞ)です。
季節の変わり目となり、じめじめした日々が始まり、
梅雨の季節となってきました。梅雨といっても悪いことばかりではありません。
きれいな紫陽花を見ることができます。
少し視点を変えると、いいことも沢山ありますよ。
さて、今回は、3ヵ月連続の2回目で、
当社の主力製品でもあるUV硬化型塗料について解説いたします。
今回のキーワードは、「熱硬化塗料からUV硬化塗料へ」です。
「UV硬化塗料って、光で固める塗料でしょ?」
と思われている方が多いと思います。
・・・その通りなのですが、一般的な光とは少し違う光を使います。
図1. UV塗料の硬化前後(液体⇒固体)
UV硬化塗料は、その名の通り、紫外線であるUV(Ultra Violet)のエネルギーを利用して、
短時間で硬化する塗料であり、図1に硬化イメージ図を示します。
紫外線やUVって、日常生活で聞くことも多く、身近なイメージがあるかもしれません。
これからの季節、太陽光に含まれる紫外線が増えて日焼けを起こしたり、
お布団を天日に干して殺菌したりするのも紫外線の効果ですよね。
さらに、歯医者さんで歯の治療のため削った部分を修復する詰め物には、
口の中でUV光を照射して硬化させるものもあります。
さて、本題ですが、
いくつかのセクションに分けて話を進めたいと思います。
◇UV(紫外線)ってどんな光?
紫外線は太陽光にも含まれており、図2に示すとおり、
波長によってUV-A(400~320nm)、UV-B(320~280nm)、UV-C(280nm未満)
に分けられています。このうち日焼けを起こすのは、
比較的波長が長いためオゾン層を通過して地表に到達する
UV-AとUV-Bの領域の紫外線になります。
(なお、UVの分け方には、UV-Aを400~315nm、UV-Bを315~280nmとする定義もある)
図2. 光(電磁波)の種類と波長
一方、今回紹介するUV硬化塗料を太陽に曝しても、
直ちに塗膜が硬化するということはありません。
(長時間の暴露で固化するものもありますが、最高のパフォーマンスはでません。)
UV硬化塗料の硬化には、地表に届く太陽光にはほとんど含まれていない、
UVA~Cの波長領域が必要となります。
◇UV硬化塗料の原材料
ここでUV硬化塗料の原材料について、触れていきます。
主な原材料は、以下のとおりです。
(ここでは、一般的なラジカル硬化タイプについて説明します。)
①C=C結合を持つUV官能樹脂(多官能アクリレートモノマー、オリゴマー等)
②光重合開始剤(自己開裂型、水素引抜き型、アミン系増感剤等)
③希釈剤(単官能アクリレートモノマー、有機溶剤等)
④高分子ポリマー(アクリル樹脂、アルキッド樹脂、等)
⑤着色塗料の場合、顔料などの色材
なお、③の希釈剤にアクリレートモノマーなどの反応性希釈剤を用い、
有機溶剤を含有しない無溶剤型のUV硬化塗料は、
VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)
を発生させない環境配慮塗料として近年注目されています。
図3. UV硬化システムの原理
◇UV硬化塗料のメリットは? デメリットは?
UV硬化塗料のメリットとデメリットについて、纏めてみました。
まず、メリットとしては・・・
○UV硬化装置がコンパクトで、秒単位の短時間で硬化するので、省スペース・省
エネルギーであり、乾燥・硬化工程から発生するCO2削減にも有用な環境配慮塗料と言える。
(熱硬化塗料は、一般的に数10秒~数10分の硬化時間が必要)
○熱によって変質・劣化するプラスチックや紙などの感熱基材への適用が可能。
○VOC対策の環境配慮塗料として、有機溶剤の配合量が少ない~
さらには無溶剤の液状塗料の設計が可能。
(なお、熱硬化塗料でも、粉体塗料と言う無溶剤塗料があります。)
一方、デメリットとしては・・・
○基材の形状による制限があり、三次元形状物では、UVがあたりにくい部位の塗膜は
硬化度が低くなり、影となる部位は当然ながら硬化しない。
○厚膜、また着色(特に濃色・高顔料濃度)塗膜では、内部までUVが入りにくく、
硬化度が低くなる。
さらに、硬化塗膜としての特長について、もう少し詳しく説明いたします。
UV硬化塗料は、モノマー(単量体)や
オリゴマー(一般的には10~100個のモノマーが結合した重合体)
と呼ばれる反応性の低分子成分をベースとして、光重合開始剤を用いることでUVによる
光重合反応によって高分子化が進み、架橋密度が高い緻密な硬化膜が形成されます。
そのため、熱硬化塗料に比べて、硬度や耐薬品性などに優れる塗膜が得られます。
それに対し熱硬化塗料は、ポリマー(モノマーの重合数が100以上)
と呼ばれる高分子成分をベースとして、
硬化剤(メラミン樹脂など)と呼ばれる多官能の架橋成分を用いて、焼付による架橋反応で、
ポリマー間を繋いで、高分子の塗膜を形成します。したがって硬化膜の架橋密度は比較的低く、
一般的に硬度や耐薬品性ではUV硬化塗膜に比べて劣りますが、
反面で塗膜の可とう性や伸び率などでは有利です。
そして、塗装現場の観点ではどうでしょうか?
UV硬化塗料では、短時間で塗膜を形成させることができるため、
生産効率を上げることが可能になります。また塗装→硬化までの工程がコンパクトなため、
環境要因によるゴミブツ対策にも有利です。
このようにUV硬化塗料には、メリットとデメリットがありますが、
近年では、低VOC、省エネルギーなどの環境配慮塗料として、
また省工程・コンパクトライン化や高速生産ライン化などの
高効率次世代生産システム向けの塗料として注目されています。
今後、熱硬化塗料との“棲み分け”の中でUV硬化塗料の活躍の場が広がっていくものと思います。
まだまだ、続けたい気持ちはあるのですが、さらに詳しいことは・・・
7月17日~19日の3日間、ポートメッセなごや(名古屋市国際展示場)で開催される展示会
「人とくるまのテクノロジー展2019名古屋」に、各種の当社UV硬化塗料を出展いたします。
ご興味があれば、是非当社ブースへお越しください。
次回は、「塗装から貼るへ」というテーマでのコラムを紹介させていただきます。