高機能性塗料コラム
第10回、パソコンも自動車も飾り付けが大事。
投稿日:2018/12/25
こんにちは。「こんな塗料できないの?」に私たちが答えます。
高機能性塗料設計技術ソリューションパートナーの上窪です。
今回より2回にわたって加飾フィルム用のコーティング剤について、
お話しさせていただきます。
○加飾フィルムって何?
皆さんの身の回りにあるパソコンやスマホなどのプラスチック筐体は
どんなデザインでしょうか。近年、ブラック、ホワイト、シルバーなどが
代表的な筐体カラーと言われておりますが、
同じブラックでも光沢感や艶消し感を変えることで、高級感を漂わせたり、
スタイリッシュにしたりすることができます。
反対に何も装飾しない元々のプラスチックは
「安っぽい、地味」などのイメージを消費者に与えてしまいます。
今回、当社の社員に対して「スマホ購入する際に何を重視するか?」というアンケートを行いました。
その結果、以下に示すとおり「デザイン」も購入の決め手の重要な要因であり、
「カラー」についてはホワイト、ブラックといったオーソドックスなカラーのスマホが
好まれていることが判りました。
このような「カラー」を含めた「デザイン」ニーズにも応えるべく、
各メーカーは消費者の感性や要望に即した製品をつくろうと考え、
筐体に何らかの方法で装飾を施します。
このことを私たちの分野では、「加飾」と呼んでいます。
この加飾を行う方法は、従来では塗装や直接印刷などが一般的でした。
しかし、塗装は簡便で大量生産性は良好なものの、複雑なデザインへの対応が難しく、
また直接印刷は三次元形状品への対応が難しいという問題がありました。
これらの問題を解消するために1960年代後半に「加飾フィルム」が開発されました。
「加飾フィルム」とは、フィルム上に印刷によってあらかじめ加飾したフィルムであり、
熱転写や貼り合わせなどの工法を用いて、三次元形状品の上に多彩な意匠を付与するためのフィルムです。
この加飾フィルムの登場によって、塗装による加飾方法は近年減少しつつあり、
塗料会社の社員としては少し残念に思うところもあります。
○加飾フィルムはどのように使うの?
この多彩な印刷を施された「加飾フィルム」ですが、
三次元形状品に加飾するためには様々な工法を用いています。
基本的な工法としてはプラスチック射出成形品の金型内加飾工法である
「インサートモールド」、「インモールド」や「水圧転写」などが挙げられます。
工法ごとに様々な特徴があり、筐体の材質や形状、コストなどを考慮した使い分けがなされています。
これらの工法について今回は詳しくは触れませんが、興味のある方はフィルムメーカーのホームページや
プラスチック加飾技術関連の書籍などで解説されておりますので、そちらをご覧ください。
・東レ株式会社 https://www.toray.jp/films/printing/process/index.html
・桝井捷平,プラスチック加飾技術の最新動向《普及版》,シーエムシー出版,(2010)
ここでは、最近のフィルム展示会や当社と付き合いのあるお客様などから、
よく耳にします「TOM成形=三次元表面被覆成形」について簡単ではありますが説明させていただきます。
「TOM」とは「Three dimension Overlay Method」の略であり、
布施真空㈱さんが提案した熱真空成形方法の一つです。
このTOM成形工法とは下の図に示す様な装置を用いて、気密構造ボックス内を真空状態とし、
加飾フィルムへ基材を押し付けた後に差圧を利用して成形する方法です。
成形用の「型」を必要とせず、基材の材質を問わないこのTOM工法は、
三次元形状品に加飾する手段として、自由度の高い優れた工法と言えます。
今回は加飾フィルムについて、お話させていただきました。
この加飾フィルムですが、ある目的でコーティング剤が塗られることがあります。
このコーティング剤こそが、当社のビジネスと深く関わっており、
次回はこの「加飾フィルム用コーティング剤」についてお話しさせていただきます。